最初はやる気がなかったのに、いつの間にか夢中になってしまう理由
やる気スイッチグループでは、会社の名前の通り「やる気」について、長年研究を積み重ねています。
突然ですが、皆さんは子どもの頃、そして大人になってからも、時間を忘れて何かに夢中になった経験がありますか。
子どもの頃の経験として分かりやすいのは、友達との外遊び、ゲームや読書、大人になってからはヨガ、料理やハイキングなど、誰でも何かに夢中になった経験があると思います。
では、「夢中になったきっかけは、何だったのでしょうか?」
私たちは、日常の中では「やる気が出ないからやらない」・「やる気が出たからやる」など、「欲求(やる気)」が生まれてから、「行動(やる)」という順番で考えがちですが、本当にそうでしょうか?
やる気スイッチグループの全国の教室では、勉強でも英語でも、運動でも、最初は乗り気でなかった子どもたちが、いつのまにかやる気になって取り組んでいる姿に変わっているのを目の当たりにすることが沢山あります。
やる気が出る仕組みは、実は大人も同じ
乗り気でなかったことに対して、いつの間にか夢中になってしまうということは子どもたちだけでなく、実は私たち大人も同じです。
例えば、自粛生活中に奥さんから「たまには夕食作ってよ」と言われて気が進まないまま作り始めたけれど思いのほか楽しく、さらに家族にも褒められたことがきっかけで、今では料理が趣味の一つになった。
また、休日にアスレチックに連れて行った子どもたちが最初は怖くて渡れなかった丸太橋をクリアすると、そこから自分でどんどん新しいことにチャレンジしていくようになった。
皆さんもこれまでの人生経験で、とりあえず行動してみたら「よかった」「おもしろかった」などという気持ちを抱いた経験はあるのではないでしょうか。
私たちはよく「やる気」が出るから行動するのだと考えがちなものですが、例のように何か行動してみた先に小さいポジティブな感情が芽生え、それが次の行動へとつながっていく。この小さな感情は、行動した後――事後でなければ芽生えてこないものです。特に新しいことに挑戦するときや、今まで好きになれなかったこと、興味を持てなかったことであればあるほどその感情は大きくなります。
最初の行動の際、外的動機付け(外部から刺激されること)がきっかけであっても構いません。
先ほどの例でも、「奥さんに夕食作ってと言われて」「アスレチックに連れてこられたから」というように、はじめは自分ではない第三者からの働きかけやきっかけが行動を起こさせます。行動した先に、「料理って意外に楽しいものだな」「想像以上にタメになるな」「怖かったけどおもしろい!」と感じるようになってくるというわけです。
そうなると、もう「やる気」のサイクルに入っています。
やる気を出すよう指示するのではなく、やる気が出るきっかけをつくってあげる
「やる気」のサイクルに入れば、「まずやってみる」→「やってよかった」→「もっとやりたい」→「さらにやってみる」→「やってよかった」と、どんどん繰り返していくことができます。何事も、初めての時には、常にこの入り口に立っています。まずは何かをやってみる。やってみてよかった感情を受け止め、さらにやりたいというサイクルに入っていくわけです。
そのようなサイクルを何度か経験していくうちに、人は“やる気”に対する捉え方・考え方が変化していきます。「やる気が出ないからやらない」・「やる気が出たからやる」ではなく、「やったらよかったと感じられるだろう」・「やったらもっとやりたくなるだろう」と…
既に「やる気」をコントロールできる人は「まずはやってみる」と自らを奮い立たせて行動に移ることができますが、まだやる気サイクルの経験が少ないお子さんに対して、このサイクルを植え付けるためにはご両親の協力が必要となります。
まず、踏み出すための環境を作ること。最初は「外からの働きかけ」も必要になる場合があります。取り組むべきテーマを目の前において、ご両親の協力も含めて「まずやってみよう」と始めること。お子さまがやる気になるのを待つのではなく、ご両親がお子さまに向き合って、まず「始める」ことが重要となります。「つくるんです」においては、まず目の前に商品を準備すること。おもちゃを片付けてテレビを消し、集中できる環境を作ってから、お子さまと並んで座って始めましょう。
こまめな「すごいね!」を積み重ねよう
環境が整ったとしても、お子さまが初めてのことは、できないことも多いと思います。ご両親は「ちょっと頑張ればできる」ということをテーマの中でも細かく設定してあげてください。“つくるんです”には対象年齢がございますので、そちらを参考にしてください。
ただ、初めてつくる際にはお子さまの様子を見ながら、ご両親によるサポートをお願いします。図面の見方、パーツの取り外し、パーツの種類・番号の指示、部品の付け方のアドバイスなど、お子さまができること・できないことを見てあげてください。
最後に、スモールステップでお子さまができたことは「こまめに褒めること!」。お子さまは、やったことがなかった一つ一つのことで褒められることにより、さらにやる気を出して「つくるんです」の完成を目指します。また、完成したら「精一杯褒めてあげて」ください。お子さまにとって、作品の完成の達成感を味わえると同時にご両親からの承認をより強く感じることができます。
やる環境を作ること、お子さまの様子を見ながらスモールステップでサポートをすること、こまめに褒めること、完成したら精いっぱい褒めること。これにより「つくるんです」をつくる中で、お子さまは「やる気」のサイクルを回すことができます。
「0→1」を楽しめる大人になるために
やる気スイッチグループでは、「つくるんです」をお子さまとご両親でつくることがお子さまにとって非常に重要な能力の獲得になると考えていることが二つあります。
一つは「実際にウッドパズルを作ることで、生きた知識・経験として蓄積されること」。
「つくるんです」は図面を見て、パズルの完成に向かって実際に木のパーツを触って・外して・組み立てる作業を繰り返します。そこには生きた知識・経験が蓄積されます。
もう一つは、「やる気」のサイクルを経験するということ。
子どもの間は、ご両親や周りの協力もあり「まずはやってみよう」・「やったらいいことがあった・褒められた」というサイクルを回す機会があると思います。それが大人になると、自分でそのサイクルを開始し自転させていくことが必要となります。そのために大切なことは、モノを0から自分で作り上げる経験を子どものうちから沢山経験することです。大人になって「0→1」を楽しめるのは、そんなお子さまではないでしょうか。
答えを自ら導き出しているという実感が大切
最後に一つだけお願いがあります。「つくるんです」をつくることは大人にとっても楽しいものですが、一緒につくる際、ご両親が過剰なサポートを行わないようにしてください。
ご両親はむやみに手を出さず、お子さまに適切なタイミングでヒントを与えるよう意識してください。お子さまが答えを自ら導き出していると実感できるよう、自分がやったと感じさせるようにしてみてください。さらに、お子さまが「できないことができるようになった」と、その小さな階段を上がったことを意識させるためにしっかりと褒めて承認する。
ご両親の声掛けが、お子さまの「もっとやりたい」「もっとできるかも」という気持ちを醸成させることになります。