昆虫ハンター牧田習さんに「昆虫の魅力＆ポケットバグズ」について聞いてみた！【前編】

暑かった夏も過ぎ、気がつけば立冬を迎えています。長袖をしっかりと着込む季節になりましたが、一途な昆虫愛は変わらない、つくるんです「ポケットバグズ」チームです。

今回お招きしたのは「昆虫ハンター」として知られる牧田習（まきたしゅう）さん。
東京大学大学院博士課程に在籍し昆虫の研究を行うかたわら、「昆虫の魅力をもっとたくさんの人に知ってもらいたい」とメディアへの出演、セミナーやイベントへの登壇などと幅広く活躍されています。そんな牧田さんに、つくるんです「ポケットバグズ」のデザイン責任者（であり自らも昆虫大好き！）の上田がお話をうかがいました。

後編（12/8頃公開予定）の最後に素敵なプレゼントのお知らせがありますので、ぜひ最後までご覧ください！

＜図鑑付き昆虫3Dウッドパズル「ポケットバグズ」とは？＞

「ポケットバグズ（通称：ポケバグ）」は、虫と触れ合う機会が少なくなった現代に、虫のおもしろさに触れて興味を持ってもらいたいとの思いから生まれた、図鑑付き3Dウッドパズルです。実際に手を動かしながら3Dウッドパズルを組み立てたり、図鑑を読んだりすることで、昆虫の生態やからだの仕組みなどを楽しく学ぶことができます。

＜昆虫ハンター牧田習さんプロフィール＞
牧田習（まきたしゅう）
1996年10月14日生まれ兵庫県出身。
東京大学大学院博士課程2年/オスカープロモーション所属。
幼少の頃に昆虫に魅了され、昆虫博士を志す。大学入学後、語学留学やワーキングホリデーをきっかけに現在も海外の研究者と協同で昆虫研究を行い、新種を発表。これまで見つけた新種は9種類。
テレビ番組「ダーヴィンが来た！」、「アナザースカイ」出演をはじめ多くのメディアで活躍中。
著書「昆虫ハンター・牧田習のオドロキ!!昆虫雑学99」(株式会社KADOKAWA刊）がある。

●とにかくフィールドに出ることが大事！

上田：牧田さんは普段も毎日昆虫採集に行かれるんですか？

牧田：そうですね。僕は仕事でも大学の研究でも虫取りをしていますが、季節ごとに「今年もこれを見たいな」とか「まだ見ていないから探したいな」と思う昆虫がたくさんいるので、常に虫取りをしています。昆虫って同じ場所でも現れるものが毎年変わったりするので、何度行っても楽しめるんですよ。

上田：著書を読ませていただきましたが、牧田さんの昆虫に関する情報のベースや発端は何なのかが大変気になっています。

牧田：本や図鑑などで勉強して「知る」ということも大切なんですが、僕は研究者でもあります。研究者として大事なことは「フィールドに出ること」だと思っています。先人の情報を得ることも大事ですが、例えば自分で昆虫を探していて、昆虫がある植物を食べているのを見つけた時、疑問が浮かんだりする。そこから図鑑などでいろいろ調べたりする。そういうことが大切で、昆虫をより好きになる一番楽しい部分でありベースになっていますね。

上田：フィールドで実際に触れるということですよね。穴場みたいな場所をお持ちだったりするんですか？

牧田：穴場というのはありませんが、実は東京は大阪よりもかなり緑が多くて、23区内でも森のある場所が結構あるんですよね。そういう場所へ行けばいろいろな虫がいるんです。初めて虫を探す人がいざ行って見つけられるかというと少し別の話になるかもしれませんが…。

上田：人にまだ気づかれていなくて、自分だけが「ふふふ」となっている昆虫はいますか？

牧田：すでにちょっと気づいている人もいると思うんですが、この間は都内でカミキリムシの仲間のアカアシオオアオカミキリを見つけました！

上田：それは多分相当マニアックな人しか気づいていませんよ（笑）

牧田：あはは、そうかもしれませんね。アカアシオオアオカミキリは珍しい緑色に光るカミキリムシで、僕が子どもの頃には本当に憧れの昆虫だったんですけど、ここ数年ぐんと増えているんです。僕の地元、関西ではどれだけ探しても見つからなかったような種類が、都心の公園でバンバン増えていたりする。昆虫が減っているなんていわれていますが、変わらないものもいるし、いろいろな理由で減ってしまったものもいるし、それぞれ注目していきたいです。

●知ってた？秋冬にだって昆虫は見つけられる

上田：昆虫採集というとどうしても夏がピークという印象がありますが、これからの季節の虫の楽しみ方を教えてもらえますか？

牧田：秋でもオオカマキリなどは割と遅い時期まで見られますね。11月くらいまでなら見られると思いますよ。僕の住んでいるところは大きな駅が近くにある結構都会といえる場所なのですが、公園のちょっとした草むらなどに入っていくと、まだまだ虫に出会えます！少し寒くはなりますが、バッタもカマキリも、コオロギの仲間なども見つけることができます。今日ここに来る時には、ビルの下でカネタタキという昆虫が鳴いているのを聞きました。

上田：探せばまだ見られるんですね。

牧田：カマキリは昼間の方が良いと思いますが、鳴く虫系は夜に探しに行くのも手です。繁華街や都心部のちょっとした公園や緑のある場所にも虫はいます。そういう場所は移り変わりが激しくて、外から運ばれてくるようなこともあるかもしれませんが、基本的にちょっとでも草むらがあれば虫はそこで暮らしています。新宿や渋谷でもコオロギはいますよね。

上田：冬になるとさすがに厳しくなってしまう？

牧田：実は冬には別の楽しみ方があります。それが「冬眠している昆虫を探す」ことです。逆にその方が探しやすいこともあります。クワガタなどは冬になれば朽木の中などで冬眠するので簡単に見つけられます。夏には見つけにくく冬の方が見つけやすい昆虫はいます。オサムシやマイマイカブリなどの仲間は冬には簡単に見つけられますよ。少し都会から離れたちょっとした森があれば、その崖などをつついてみてください！

上田：マイマイカブリってガスを噴出するやつですか？

牧田：それはミイガラゴミムシですね。それも冬に見つけられます。マイマイカブリも冬は多摩川などの河川敷でいくらでも見つかりますよ。

上田：小さな頃に千葉で虫のガスにやられたことがあるんです。初めて見た虫だと思って捕まえたら目をやられてしまって、失明するかと思いました。あれはミイガラゴミムシだったのかな。

牧田：あのガスは100℃くらいありますからね。

上田：それでも虫嫌いにならなかったんですよね（笑）。

牧田：虫に刺されたりしても、嫌いになるのとはまた別ですよね（笑）！

●日本は世界的に見ても「虫好き」が多い国⁉︎

牧田：日本は世界的に見ても虫好きな人が非常に多い国なんです。トップクラスに多い。子どもが虫取り網を持って虫を追いかけるという文化は日本以外にほとんどないんです。そういった意味では、やっぱり日本だからこそ「ポケットバグズ」のようなパズルも生まれるのだと思いました。

上田：虫に全く興味がないというのはどういうことなんでしょう？

牧田：もちろん虫に興味がある人はいます。ファーブル昆虫記のファーブルもそうですよね。フランスなどにはそういった文化があるにはあるのですが、基本的に他の大多数の国の人たちはあまり昆虫に興味はありません。子どもが虫を追いかけるということは、他の国では「お金のため」だったりするんです。東南アジアなどに行くと虫を持っている子はいますが、基本的にはそれは「採ってきて売るため」とか「食べるため」なんです。「楽しいから、好きだから捕まえる」のはごく一部です。僕は海外で、いわゆる日本の昆虫オタク少年のような子をほとんど見たことがありません。大人でコレクターとして昆虫を集めている人はいますが、子どもの頃から本当に虫が好きで楽しくて、家に帰ったら標本を作っています！みたいな人は見かけないんです。こういう「ポケットバグズ」のようなものがあるという国は世界を見てもなかなかないんじゃないでしょうか。

上田：昆虫の研究者も海外には少ないということですか？

牧田：少ないわけではないですが、僕はさておき虫が好きなだけではみんな研究者にはならないし、虫が好きだけではなく「研究が好き」でないと難しいですね。でも、好きでそのまま研究者になっている人がいるのも日本です。もちろんみんな昆虫好きなのは当然ですが、日本のようなタイプの「虫好き」、虫を持って嬉しくてプルプル震えるような人は世界的にはあまりいなくて、日本くらいしか生み出さないんじゃないかと思っています。